Thursday, March 24, 2016

ゴッホのベッドルーム、AirBnB

アート・インスティチュート・シカゴのゴッホ展のプロモーションの一環で、シカゴではもうひとつ面白い企画が進行中。美術館のすぐ近くのアパートメントがゴッホのベッドルームとして再現され、AirBnBを通して泊まることができる。この部屋には「ベッドルーム」のほかに、キッチンやバスルーム、そしてリビングルームも完備され、エアコンもテレビもインターネットもあるそう。宿泊客は19世紀のゴッホの暮らしに思いを馳せながら、21世紀の快適な夜を過ごすことができるというわけだ。1泊なんと10ドルだって!

写真はAirBnBより

ヴァン・ゴッホ展「Bedrooms」

大好きなアート・インスティチュート・シカゴで、またまた楽しい展覧会が開催されている。ゴッホの「Bedrooms」 シカゴに常設展示されている自身の寝室を描いたゴッホのこの作品が、実は3点存在しているというのはあまり知られていなかった事実。他のふたつはアムステルダムのゴッホ美術館とパリのオルセー美術館にあり、今回その3作品がここシカゴに集合。3つを同時に見られるのは北米では初の試みだそうで、そういった意味でも注目を集めている特別展である。

37年の短い生涯に24都市37件の家に暮らしたというゴッホが、このイエローハウスと呼ばれるフランス・アルルのアパートメントに移り住んだのは1888年のこと。最初の作品は引っ越してすぐに描いたとされ、2作目はその後精神病院にて、そして少しサイズの小さい3作目は母親と姉への贈り物として描かれたそうだ。3作目が少し小さいことをのぞけば一見してほとんどコピーに見える3作品を、この展覧会では、床、椅子、窓、サイドテーブルの食器や壁にかかった絵画など、細部に渡って厳密に比較し、その検証の過程における科学的な発見や証拠を、大型スクリーンやインタラクティブな技法を用いてわかりやすく解説している。そして何より楽しいのは、実物大の部屋のレプリカをギャラリー内に作ってしまっていること。この部屋の前に立つと、まるで南仏のアルルでゴッホになったような気分になれる….とまでは言わないけれど、贅沢にスペースを使ってこんな突拍子もないことをやっちゃう展覧会は、さすがアメリカ。あまりにも有名で、見尽くされ語り尽くされたアーティストを、こんなに新鮮な切り口で見せてくれる。やっぱりアート・インスティチュート・シカゴは最高だ。

木曜限定の夜間公開では比較的ゆっくり鑑賞できる
この空間のゆったり感は、やっぱりアート・インスティチュート
広い空間に3作品が並ぶ
第1作目はアムステルダム・ゴッホ美術館所蔵作品
精神病棟で描いたとされる第2作目が我がシカゴ所蔵の作品
3作目、ちょっと小さい作品はパリのオルセー美術館から
様々な比較検証をわかりやすく説明した
ドキュメンタリー・ビデオも見られる
実物大で作られたゴッホのベッドルーム
やはり南仏で制作された「Night Café」
ここにも作品の前に実物のカフェ。遊び心満点の楽しい特別展なのだ

Saturday, March 19, 2016

Spotlight

とてもいい映画を観た。Spotlight。ボストンの新聞社のローカル・コラムを担当する部署がカトリック教会のスキャンダルをすっぱ抜いたという事実に基づく社会派ドラマ。周囲の圧力に屈しない粘り強い地道な取材から明らかになっていく事件が、後に国際的な論議に発展していくという、ジャーナリズムとはこうでなければ、というストーリーだ。暴力シーンにもセックスシーンにも頼らずに、余計なコトは一切描かず、事件だけにフォーカスした内容には時間を忘れるほど集中して観入ってしまった。正義感と情熱にあふれるジャーナリストたちの姿勢と絶妙なチームプレイが気持ちよく、質の問われる今日のメディアのあり方にもストレートなパンチを効かせていると思う。


sawada coffee

渋谷で「STREAMER COFFEE COMPANY」というコーヒーショップをプロデュースしているという澤田洋史さんのお店、sawada coffee。去年の年末にウエスト・ループにオープンして以来、話題のコーヒーショップである。澤田さんは、何でもラテ・アートで世界チャンピオンになったとかいう人で、バリスタとしてだけでなくビジネスマンとしてもやり手らしい。米国1号店がなんでシカゴなのかはよくわからないが、シカゴ在住の日本人にとってはとても嬉しい。と言ってもこのお店は日本人客に特化しているわけではなく、一杯一杯ていねいにドリップしてくれる美味しいコーヒーは、シカゴに暮らすコーヒー好きの心をしっかりと掴んでいるよう。抹茶ラテの抹茶もちゃんと茶筅で点ててくれるのだ。

ウエストループのインダストリアル・エリアにあるコーヒーショップは
ニューヨークのブルックリンのよう
派手なストリートアートが迎えてくれるエントランス
スケートボードを利用した遊び心たっぷりのドリップ台。
ていねいにドリップしてくれるコーヒーの香りがすばらしい
アメリカのカフェのバリスタくんたちは、
どうしてみんなこんなにカッコいいのでしょう
澤田さんご本人がお店のインテリア・デザインのモチーフになっている
お隣のバーと共有するスペースは天井が高く広々していて気持ちいい
話題の抹茶ラテ。Donut Vaultのドーナッツも素朴で美味しい

Sunday, March 13, 2016

ブルーマン・グループ

ウチのすぐ近所の専用シアターで、もう13年くらい続いているロングラン公演「ブルーマン・グループ」を、13年振りくらいで観に行った。ちょっと下品で汚かったりするネタもところどころあるけれど、音楽×アート×笑いの多彩な芸と観客を巻き込む演出は大いに楽しめるエンターテインメント。客席を縦横無断に移動する青い男たちに選ばれたら最後、恥ずかしいなんて言ってはいられずステージに上がって、一緒にパフォーマーになるしかないことを覚悟して劇場に足を運ばなくてはいけない。こういったショーの盛り上がりには、ホント、アメリカ人には頭が下がる。客観客全員が仕込みじゃないかと思うくらい、出演者と観客との一体感が素晴らしいのだ。でも恥ずかしがり屋さんはあまり前のほうの席には座らないほうがいいかもね。大人も子どももおおはしゃぎでキャーキャー言っているうちにあっという間にフィナーレ! 無表情の真っ青な顔、コミカルだけれど洗練されたカラダの動き、セリフの一切ない舞台….とユニークさ満点のパフォーマンス。13年間毎回会場を満席にするロングランにも納得なのだ。




ガールスカウト・クッキー

3月のアメリカはガールスカウトの季節、いや正しくはガールスカウト・クッキーの季節だ。全米のガールスカウトに所属する女の子たちが募金集めのために販売する、一年でこの時期にしか買えない季節のお菓子。今年はアカデミー賞の授賞式で、娘もガールスカウトに所属するという司会のクリス・ロックの呼びかけで、地元のガールスカウトたちががクッキー箱を手に観客席を回り、ケイト・ウィンスレットやマット・デイモンらがクッキーを購入する姿も放映された。会場での売り上げは6万5243ドル(約780万円)だったそう。

ワタシの場合は、「うちのムスメからぜひ!」という職場の同僚数人から毎年購入。子どもたちにもノルマがあるらしく、親もけっこう必死なのだ。募金集めという目的と同時に、子どもたちにはクッキーの販売を通して、目標の設定やお金の管理、人と接する技術やビジネス倫理を学ぶという機会にもなる。そして大人はチャリティに協力しているという満足感とともに、年に一度の美味しいクッキーを楽しめるというわけだ。お味もけっこう美味しくて、実は毎年楽しみにしているという大人も少なくない。「あなたの好きなガールスカウト・クッキーの味はどれ?」と質問すると、たいていすぐに答えが返ってくるほど、アメリカおいては定番なお菓子なのである。ガールスカウトの女の子たちからしか買うことができないっていうところも、人気のヒミツなのかも。

ほんのりミント味でさくっと軽い
チョコレートクッキーのThin Mintsは、
ガールスカウト・クッキーの中でも一番人気。
今年は同僚おすすめのも買ってみた。
香ばしいココナッツとキャラメルの組み合わせ、
Samoasはしっとりと濃厚
親に付き添われてクッキーを販売するかわいいガールスカウトたち。
この時期の街角ではこんな光景があちこちに
アカデミー賞授賞式の会場で、カメラにばっちり捕らえられた
レオナルド・デカプリオのクッキー・モメント!
Eonlineより

Saturday, March 12, 2016

Glazed and Infused

こちらもワタシの中では毎年恒例。緑の川を見に来ると食べるのは、Glazed and Infused のドーナッツ。今年は例年になく暖かい冬だけれど、それでもやっぱり3月早朝の川べりは寒いので、美味しいコーヒーとスィートなコンフォートフード・ドーナッツはココロに優しく、ペロリ。

オレンジがブランドカラーの店内も、
今日は緑の川に合わせてシャムロック
オレンジと緑、アイルランド・カラーのドーナッツは
本日のスペシャル
チョコレート・ディップにも緑のお化粧
店内にはアイリッシュ・ダックも並んでいました!

緑のシカゴ川

毎年恒例、アイリッシュ・グリーンに染まるシカゴ川。もう50年以上も続いているという、シカゴならではのセント・パトリックス・デーのお祭り騒ぎだ。もともとは未処理の下水がどこから川に漏れ出ているかを調べるために使った染料が、偶発的にこの鮮やかなグリーンを作り出したことが始まりだそうで、この全国的に有名なシカゴの伝統行事は、今でも地元の配管業組合が主催している。当初の化学染料は今では使われなくなり、環境に優しい植物性染料を、川の一部を4〜5時間だけ緑に保つに充分な量だけ撒くそうだ。モーターボートから撒かれる染料は最初は黄色なのだけれど、それが水に混ざると鮮やかな緑に変わる。それを後ろから追いかけるもう一艘のボートが、アクロバット的に蛇行走行しながら水を攪拌して川の色を均一にする。他の都市も、このシカゴ川の行事を真似たいと申し出るらしいのだけれど、シカゴの配管業組合は染料の調合のヒミツを絶対に明かさないので、まだどこもこの完璧なアイリッシュ・グリーンを再現することには成功していないんだって。ワタシの中では、グラウンドホグ・デーに次いでアメリカの2大バカバカしい行事のひとつなのだが、街をあげてこういう冗談みたいなことを本気でやっちゃう、アメリカの脳天気なお祭りがワタシは結構好きである。暖冬の影響で、今日はとても過ごしやすい土曜日。多くの人出に混じって、川が緑に染まる様子をたっぷり楽しんだ。

お天気のいい朝日に輝く緑の川とシカゴの街

「絆」写真展

「絆」のイベントの一環として、開催されている写真展「Children of Tohoku」 仙台在住で被災状況を追い続ける写真家、宍戸清孝氏による被災地の子どもたちのポートレイトを集めている。写真パネルの隅に表示されたQRコードをスキャンすると、スマートフォンで被写体の子どものメッセージをその場で鑑賞できるという、今の時代ならではのインタラクティブな展示となっている。会場は、平日は州事務所のあるJames R. Thompson Centerとシカゴ市役所Richard J. Daley Centerのロビー。週末は一部ユニクロでも見ることができる。「将来は大工になって壊れない家を作りたい」「世界に先駆けた車を作る技師になりたい」「一日一日を精いっぱい行きたい」…. 幼くして目の前でたくさんの大切なものを失った子どもたちにとってのこの5年間は、大人たちのそれとは比較にならないほど長くて重かったことだろう。それでもじっとカメラを見つめ、笑みをたたえながら頼もしく将来の夢を語る姿に、こちらのほうが励まされて胸が熱くなる。

ユニクロの明るい店内に展示された写真の数々
ポートレイトの右下にあるQRコードをスキャンすると
YouTubeのビデオメッセージがスマートフォンに現れる
日本経済新聞社から提供された
震災後の被災地の写真も
いくつか展示されている

Monday, March 7, 2016

113 Project

震災からちょうど3年目の2014年3月に「東北友」というドキュメンタリーを観た。かつて石巻の中学校で英語を教えたというシカゴ在住のWesley Julian監督のこのドキュメンタリーは、震災のあと誰もが「東北のために何かしたい」「自分に何ができるのだろうか」と思った、そんな気持ちを思い出させてくれるフィルムだった。そのJulian監督が5年目の「絆」に合わせて発表した「113 Project – Reclaiming Tohoku」は、「東北友」の後も東北に通い続け、地域の復興に向けて頑張る地元の人々の声を撮り集めたショートフィルムのコンピレーション。東北各地の美しい風景や祭りのシーンをバックに、現在を生きる被災地の人々の忍耐と希望を、インタビューを通して優しく引き出している。「東北友」でも感じたけれど、心のこもったステキなメッセージに自然と笑みがこぼれ、また東北を訪ねてみたくなる。「113」は、3.11を反対に並べることで震災のネガティブなイメージを払拭するという意味に加え、1+1=3、被災地の様子を知るにとどまらず、人々のあたたかさや地域の美しさを再発見し、単純な足し算では計れない、もっと深い東北を見つめなおすきっかけにして欲しいのだそうだ。

113 Project Short Film Series: Young Adults from Tohoku Tomo on Vimeo.

Sunday, March 6, 2016

「絆」追悼式

東日本大震災から今年で5年。「絆」は、震災の記憶を薄れさせず米国市民に被災後の姿を伝えつづけようと、シカゴ姉妹都市大阪委員会が中心となって、シカゴ日本国総領事館、日米協会、シカゴ日本商工会議所、ジェトロなどを巻き込んで震災後に立ち上がったプロジェクト。5年目の節目となる今年、追悼式にワタシもボランティアとして初めて参加した。会場は、世界一大きいティファニーのステンドグラスドームで知られるシカゴ・カルチュラル・センター。美しい会場には300人近い人々が集まった。「被災地の若者たちの未来」をテーマに組まれたプログラムは、仏教式の追悼法要に加えて東北の若者たちのビデオ・メッセージやシカゴの子どもたちによる歌の贈り物など、厳かな中にも明るさを感じるとてもいい式だった。「絆」関連のイベントは、東北の子供たちをテーマにした写真展、青少年交流、経済セミナー、自然災害の緊急対応と国際パートナーシップについてのパネルディスカッション、映画上映会など、シカゴ市内で2週間ほど続く。被災地からこんなに遠く離れた場所にも、「被災者のことを忘れはしない。より強い絆で友好関係を築いていく」という人たちがたくさんいる。そんなことを日本の人たちにも知って欲しい、そう思った一日だった。

巨大なティファニー・ドームで有名な
シカゴ・カルチュラル・センター。
壁のモザイクやクラシックなシャンデリアも美しい
ボランティアのユニフォームのTシャツはユニクロさんのご協力
シカゴ姉妹都市大阪委員会代表で、
「絆」イベント発起人の野毛洋子さんによるご挨拶
軽食も用意されたリセプションには300人近いシカゴの人々が集まった
会場に作られた祭壇は、
控えめだけれど機能的で美しい
シカゴ仏教会のNakai住職による読経
モンテソーリ・ランゲッジ・アカデミーの子どもたちによる合唱。
震災当時まだ生まれていなかった年齢の子もいて、
将来ここで歌ったことを思い出して
その意味を理解してくれる日が来ることを思うと頼もしい
会場に集まった人たち全員で、
震災の応援歌『花は咲く』を歌って締めくくり
2週間を通して様々な関連イベントが企画されている
「絆」プロジェクト