Friday, December 25, 2015

Le Coupe-Chou

パリ最後の晩餐はカルチェラタンのLe Coupe-Chouへ。17世紀からあるという一軒家のクラシカルなビストロは、重い扉を開いて薄暗い照明の店内に一歩足を踏み入れた途端、薪の燻る暖炉のいい香りに包まれる。料理は伝統的なフランス料理。といっても堅苦しくはなく、普段着で楽しめる家庭料理のような趣である。あぁ、もっと胃袋が大きかったらいいのにと思うくらい、メニューには美味しそうなものばかり。この次パリに来る時も絶対にまた来たい店なのだ。

カルチェラタンの路地にひっそりと
隠れ家のようなお店
洞窟に入って行くような入り口もミステリアスでわくわくする
17世紀から変わらないと思われる階段
暖炉で燻る薪のいい香りが店内を優しく包む
伝統的なフランス料理と言えばコレ、エスカルゴ
鴨のローストも美味しい
レストランSolaのデザートとはうって変わって、
どかんとボリュームたっぷりのミルフィーユ。
素朴な甘さが優しい美味しさ

こちらもローテック。昔から変わらぬ製法で作られる焼き栗は、パリの冬の風物詩。いい香りのする湯気が立ち上る大きな鍋を備えた屋台が、街のあちこちに見られる。あつあつホクホクの栗はちょっぴりもそもそするけれど、素朴で心がほっこりする美味しさ。無言で皮をむきながら黙々と食べるのだ。

年季の入った大きな鍋からいい香りの湯気が立ち上る
大きさがまちまちなのも素朴でいい
冬の夜空にほくほくの栗!

エッフェル塔と満月

パリ最後の夜。エッフェル塔の真下まで行ってみる。観光客の長い行列に、とても展望台まで上がる気にはなれなかったけれど、わりとローテックな感じのライトアップを下から見上げるだけで結構満足。冷たい冬の空気にきりりと映えるハンサムなタワーは、クールだけれどどことなくラブリーでもある。そして今日は満月。パリの夜空もハンサムなのである。

まわりに高い建物がないせいか、
ハンサムな姿がひときわ目立つライトアップ
塔の真下からてっぺんを見上げる
満月のセーヌ川とパリ

↓ そしてどことなくローテックなライトショー


Thursday, December 24, 2015

ノートルダムのクリスマス・ミサ

Sola」で食事をしたあと、そのままセーヌ川にかかる橋を渡って、シテ島のノートルダム寺院へ。うわさに聞いていた正面広場の大きなクリスマスツリーは見当たらず、今年はテロの影響でツリーは中止になったのかな。ミサに際しては大勢のセキュリティが動員され、教会に入るのにも2か所でボディチェックと荷物検査。観光客も含めて、大勢の人が集まるこんな場所で、しかもクリスマスの日に何かあったら大変。ここは今日、もしかしたらパリで一番安全な場所かもしれない。

混雑と長いセキュリティの列を予想して9時半に到着。あんまり前のほうではなかったけれど、それでもわりといい席に座れた。さすがは大きな聖堂で、テレビモニターが数カ所にあり、祭壇の様子が後ろのほうの席の人にも見えるようになっている。もしかしたら全世界にテレビ中継とかもしてるのかも。11時になると荘厳なパイプオルガンとともに聖歌隊の合唱が始まる。やっぱりノートルダムの聖歌隊ともなればプロ並みにレベルが’高いのでしょうね、男性・女性・子どもたちと、様々な歌声が石造りの高い天井に美しく響いて、それだけで厳粛な気持ちになる。そして25日0時、ちょうどキリストの生誕のときになると、後ろの扉から司教様御一行が入場。おそらくインセンスだと思われる神秘的な煙を立ちのぼらせながら、ゆっくりと祭壇へ向かって歩いて行く。そこから先は全部フランス語なので、何をお話になっているのかは具体的にはわからなかったけれど、おそらくは、世界の平和と、天国にいる魂が安らかであることへの祈りだ。キリスト教徒でもない世界中からの物見遊山の観光客にもこうして扉を開くパリの教会。美しいミサにあたたかい気持ちになって、知らないモノ同士でも「メリークリスマス」と言葉を交わす時間。11月の同時多発テロによる厳戒態勢と聞いて、一度はやめようかと思った旅行だったけれど、そんなパリの素晴らしいクリスマスに触れることができて、来てよかったと思う。

ゴシック建築の代表のノートルダム大聖堂。
世界遺産に登録されている。
ナポレオンの戴冠式もここで執り行われたんだそう
遠かったので祭壇で何が行われていたのは
ちょっと見えなかったけれど....
音楽は素晴らしい。パイプオルガンも荘厳
午前0時とともに、後方の扉がパーンと開いて、
司教様御一行のお出まし
インセンスの煙に包まれ、
燭台を高く掲げて御一行が入場してきたけれど
これだもの、観光客。
写真の嵐で何も見えません。
って、ワタシもこのひとりなんだけどさ

ふたりの日本人

今回のパリ旅行では、パリで活躍するふたりの日本人に会った。ひとりは、芦屋と青山とパリに「Jardin du I'llony」という店舗を持つフラワー・デザイナーの谷口敦史さん。彼のとてもとてもステキなアレンジを以前からフォローしていて、いつか機会があればお会いしてみたいと思っていた人。日本とパリを毎月往復しているという多忙なスケジュールの中、「お店を訪ねたいのですが….」というワタシの不躾なEメールに快くYesの返事をくれた。16区ヴィクトル・ユーゴー広場からパリらしい石畳の細い路地を入ったところにあるお店は、小さいけれど清潔感のあふれるステキなお店。種類こそ多くないけれど、選び抜かれた花材と洗練された花器類が小さな空間にセンスよくディスプレイされている。彼の3軒目の店となるパリ店は、2015年にオープンしたばかりでまだまだ模索中とのことだけれど、パリでも着実にクライアントを増やしているそうで、アーティストとしてもビジネスオーナーとしても、見習いたいバイタリティなのだ。

ビクトル・ユーゴー広場から
小さな路地を少し入ったところにある
谷口さんのお店Jardin du I'llony
谷口さんとともに
谷口さんの選んでくれた花材で、
パリの街の窓辺に似合うブーケが出来ました!

もうひとりの日本人は、ミシュランひとつ星を獲得したパリで話題の創作日本料理店「Sola」のオーナー・シェフ吉武広樹さん。全く予約が取れないと聞いていたけれど、ギリギリだったにもかかわらず、クリスマスイブのコースディナーの予約が取れた。場所はノートルダム寺院からセーヌ川を挟んだカルチェラタンの一角。17世紀の歴史ある建物の、梁がむき出しになった重厚な天井や壁を上手に生かしながらモダンに改造して、とても雰囲気のいいお店である。出て来るコース料理の1品1品がどれも絵画のような美しさで、繊細で優しい味付けと、たくさんの種類が出てくるのにもかかわらず、どれもぺろりと食べられてしまう軽やかさ。シカゴにも西洋風にアレンジしたおしゃれなモダン・ジャパニーズのお店はたくさんあるけれど、こういう繊細さを持つ店は見たことないですね~。お店には日本人のサーバーもいたけれど、ワタシたちのテーブルを担当したのは英語の達者なフランス人で、料理を褒めまくっていたら、食事の最後に吉武シェフをテーブルまで連れて来てくれた。あまりに若いのでびっくり。あとから知ったけれど、この人「情熱大陸」にも出てたのね。海外で活躍する日本人に出会うのは、どんな時でもすごく新鮮。いろいろな人がいろいろな経緯でその場所に辿り着き、そこでもみくちゃになりながらふんばって、何かを達成していくのだ。ワタシもね、まだまだがんばらなくちゃ!

デザートのような繊細な盛り付けの
ステーキとごぼうのメインディッシュ
こちらは、ホンモノのデザート
抹茶のムース・ケーキ

シャンゼリゼ

「シャンゼリゼ商店街」という別名を持つ原宿表参道のクリスマス・イルミネーションは、このシャンゼリゼをモデルにしたとかしないとか、シャンゼリゼはクリスマス・イルミネーションの元祖らしい。コンコルド広場からシャンゼリゼに続く大通りの舗道は、この時期たくさんの屋台が並ぶクリスマス・ビレッジ。ドイツのクリスマス市を模したシカゴのクリストキンドル・マーケットを毎年楽しんでいるワタシだけれど、今年は負けました。シカゴのクリストキンドルなんて、ここに比べたら子どもだましみたいなもんだわ! なるほど、こういうのがヨーロッパの大規模なクリスマスなのね。今年は11月の同時多発テロを受けた厳戒態勢の中、このクリスマス・ビレッジやイルミネーションを中止にするかもとの話も飛び交っていたけれど、パリはそんなことに負けてはいない。華やかなイルミネーションがきらめく中、みんな幸せそうに寄り添って、クリスマスイブの繁華街を楽しんでいる。けれどその陰には、予期せぬ悲しいクリスマスになってしまった人がくさんいることも忘れてはいけない。家族や恋人や友人と楽しく過ごす当たり前の小さな幸せを、一瞬にして奪ってしまう無差別な暴力。そんなものがこの世界からすべてなくなるように願う今年のパリでのクリスマス。

凱旋門に向けて真っ直ぐに伸びるシャンゼリゼ大通りの
まばゆいイルミネーション
反対側、コンコルド広場側は、こちらもまばゆい観覧車
カルティエの本店は、ビルが丸ごとギフトボックスに
この色は言わずと知れたティファニー

サン・ジェルマン・デ・プレとサン・シュルピス

左岸最大の商業地域サン・ジェルマン・デ・プレ。その中心にある交差点には、「マゴ」「フロール」「リップ」といったベルエポック時代からのカフェが当時のままの姿で残り、かつてここでサルトルやヴォーヴォワールが議論を交わしていたという姿なんかをちょっと想像してみたりする。そして同じ交差点に静かに佇む教会が、サン・ジェルマン・デ・プレ教会。とんがり屋根のかわいい鐘楼はパリ最古の11世紀ものだそう。数あるヨーロッパの荘厳な教会と比べると比較的こじんまりした内部は、観光客で賑わう商業地の喧噪からはうって変わって、ほどよい薄暗さがホッと落ち着く空間。時代を感じさせる美しさと静けさが、とても魅力的な教会だ。

パリ左岸の一大商業地区の目印的な存在。
パリ最古の鐘楼はサン・ジェルマン・デ・プレ教会
パリといえば、言わず都知れたカフェ・デュ・マゴ。
サルトルやボードレールも通ったという
サン・ジェルマン・デ・プレの歴史あるカフェ
表の喧噪からは想像もつかない
ひっそりとした教会内部
絵のように美しいパイプオルガン
教会の外では、クリスマスの飾り付けを売る人たち。
ステキなパリのクリスマス・1シーン


サン・ジェルマン・デ・プレ界隈にあるもうひとつのカトリック教会がサン・シュルピス。サン・ジェルマン・デ・プレ教会に比べると圧倒的に規模の大きいこの教会の、パイプオルガンは世界最大級だそうで、フランス革命行以降未完成のままという左右非対称の塔や、ドラクロワの壁画やグノモンの日時計など、見どころの多い教会である。

そしてこの教会を見逃せないもうひとつの理由が「ダ・ヴィンチ・コード」 2003年に出版されたダン・ブラウン作のキリスト教にまつわる壮大なミステリーは、トム・ハンクス主演で映画化もされた。今回パリに来るにあたって映画をもう1回観て予習してきた作品の中では、夏至と冬至の正午に、この教会内で対面するステンドグラスから差し込む光が床のタイルに作るラインを「ローズ・ライン」と呼び、その先にあるオベリスクの足元に秘密を解く鍵「キー・ストーン」が隠されていることになっている。劇中で「ローズ・ライン」と呼ばれるこの日時計は、史実上そう呼ばれたことは一度もないそうで、またこの場所にもキリスト教異教徒の隠された秘密などは何もなく、物語の内容はあくまでフィクション。それでもこうして静かな教会で意味ありげな多くの調度品に囲まれると、どこかミステリアスな空気を感じずにはいられない。本、映画とも一世を風靡しただけに、ぜひぜひ訪れたい教会なのだ。


ちょっと繊細さに欠ける気がする右側が未完成の塔

ミステリアスな日時計は、夏至と冬至の正午に、
ステンドグラスに開いた穴から差し込む光が
正面のオベリスクと床に真鍮で描かれた線を照らす。
この線を「ダビンチコード」劇中で
「ローズライン」と呼んでいる
世界最大級だというパイプオルガン。
個人的には、サン・ジェルマン・デ・プレ教会の
パイプオルガンのほうが、綺麗な気がします

ちょっとボラれたかも….

美術館は大好きだけれど、旅先での急ぎ足アート三昧はやっぱり疲れる。そんな疲れもあって、オルセーを出たら、目の前で勧誘している人力車のお兄さんにするすると引き寄せられ、「ノートルダムまで20ユーロ!」という言葉に乗っかってしまった。
  「行き先はノートルダムじゃなくて、サンジェルマン・デ・プレ近くのレストランんだけれど….」
  「オッケー、オッケー、問題ないよ、連れて行くから」 
そんなやり取りの後、疲れたカラダにほどよく冷たいパリの風を受けながら、セーヌ河畔を気持ちよく走り抜ける。そして「ここだよ」と降ろされた場所は全然違う場所! しかも料金はひとり20ユーロだと言って譲らない。話がちが~う!!! 結局タクシーの3倍はかかってしまった運賃。 そういえばローマの地下鉄では財布をすられたし、リスボンでは地下鉄の10回回数券が何度買っても1回しか使えなかったし、ヨーロッパではなにかと旅行者的な罠にかかるワタクシ。まぁ、間違いも旅の醍醐味のうちなのだ。もっと大きな事件や犯罪に巻き込まれたりしなくてよかったと思って、次、行きましょう!

まあね、
これだけ一生懸命漕いでくれるのだから、
よしとしましょう

オルセー美術館

言わずと知れた世界でも最も知られた美術館オルセー。25年前にはなかったので、訪れたのは今回が初めて。シンボルとなっている時計台からも偲ばれるように、建物はかつての駅舎。セーヌ河岸に建つベル・エポックの香り漂うこの優美な駅舎が、印象派絵画のための美術館と生まれ変わったのは、フランスらしいセンスの良さなのだ。印象派、ポスト印象派を代表する、マネ、モネ、ドガ、セザンヌ、ロートレック、ゴッホ、ルソー….まるで美術の教科書を見るように、ここではそのホンモノたちに会うことができる。ぜいたく~。でもワタシが最も気に入ったのは、印象派絵画より、以前は列車のプラットフォームだった高い天井の中央ホールに、ランダムに並べられた彫刻たち。彫刻たちの展示の間におかれたベンチに座って、彫刻たちと会話するように、あるいは彫刻を見て歩く人々のリアクションを観察したり、そんな時間がとても心地よい。天窓から降り注ぐ自然光のおだやかさに、ちょっとだけうとうと….歩き疲れも癒される。

ため息が出るほど美しい、優雅な駅舎跡
作品と会話するように鑑賞できる中央吹き抜けの彫刻ホール
印象派の代表のひとりは、このお方
ワタシが最も好きな印象派のひとつ、
ドガの「踊り子」
同じものがシカゴ美術館にもあります
ユニークなインテリアのカフェもステキ
大きな時計窓から覗くパリの街

サント・シャペル

パリ発祥の地シテ島にあるサント・シャペル。ステンドグラスが美しいのでぜひぜひ行きなさいと薦められたこの教会は、敬虔なクリスチャンであった13世紀のフランス国王が自身のキリスト・コレクションを安置するためにに建てた礼拝堂で、ゴシック建築の粋を極めた傑作と言われているんだそうだ。そのゴシック建築の外観は、灰色の石が冷たい感じでとてもシンプル。近づけば細部まで施されている装飾もぱっと見ただけでは気がつきにくいので、ホントにここか? と思うほど地味なたたずまい。でも、セキュリティを抜けて1階の入り口から狭いらせん階段で2階の礼拝堂に上がると、思わず感嘆のため息。繊細な図柄と色が組み合わされた高さ15mにも及ぶ巨大なステンドグラスが、礼拝堂を取り囲む周囲の壁を埋め尽くしている。それぞれのステンドグラスは新旧聖書の場面が1000以上再現されているそうで、グラスを通して差し込む柔らかい光は、ピンク、オレンジ、青など様々な色が入り混じり、きっと万華鏡の中に入ったらこんな感じ? この空間ではクラシックなどのコンサートも開かれるようで、機会があれば音楽も聴いてみたい。

思わず息を飲む見事なステンドグラス。
写真で伝わらないのが残念
繊細な図柄は様々な聖書の場面だそう
ぱっと見、地味なんですけどね、外観

Wednesday, December 23, 2015

オテル・ド・ルーブル

今回滞在下したハイアット・ホテルズ傘下のオテル・ド・ルーブルはルーブル美術館のすぐ横。巨大すぎる美術館に「すぐ横」という言葉はそれほど役には立たないけれど、それでもどこに行くにも歩いて行けて、とても便利なロケーションなのだ。パリに来てまでアメリカ資本のホテルですかぁとお思いでしょうが、このホテル、どこにも「ハイアット」とは書いてないので驚いた。巨大チェーンのブランド・アイデンティティを極力抑え、歴史あるパリ美観地区の美意識に最大限の敬意を払いながらも、大手ならではの効率を重視したサービスには妥協しない….と、さすがはビジネス上手なアメリカン・カンパニー。諸事情あって選んだホテルにちょっとつまらなさを感じないでもなかったが、窓の外に広がるパリの冬ならではの、クラシックでモノトーンな風景に大満足の滞在だったのだ。 

歴史あるグレイの外観がパリらしいホテル
多くの人が急ぎ足で行き交う街の中心地にある
目の前の大通りの正面はオペラ座
表通りに面した階下のカフェで、
行き交う人たちを眺めながら一服するのも楽しい
冬の街のストリート・ミュージシャン