Friday, May 29, 2015

ウーマン・イン・ゴールド

「Woman In Gold」という素晴らしい映画を観た。第2次世界大戦中にお金持ちのユダヤ人家族からナチスが接収した肖像画「アデーレ・ブロッホ・バウアーⅠ」の返還裁判を、オーストリア政府に対して起こした老女とその弁護士の奮闘を描く、実話に基づいたお話。主人公は、肖像画のモデルのアデーレとその夫で絵画の元々の所有者ブロッホ・バウアーの姪で、戦時中にアメリカに亡命したユダヤ系アメリカ人、マリア・アルトマン。そしてマリアと共にオーストリアを訪ね、自分の祖父母たちがたどった道のりを自身のルーツと重ねていくうちに、このケースは自分にとっても大切なケースであることに気付いていく、やはりユダヤ系のマリアの友人の息子の若い弁護士。物語は絵画を巡る裁判への困難な道のりの間に、第二次世界大戦時のマリアとその家族の様子をうまくフラッシュバックさせながら進んでいく。マリアを演じるヘレン・ミレンのすばらしさと、ウィーンの街の美しさ、そして60年以上も前に起きたホロコーストの残した残酷な傷が心に響く。

戦後ウィーンのベルベデーレ・オーストリア美術館に展示されていたこの絵画は、マリア・アルトマンが勝訴したのち、現在ニューヨークのノイエ・ガレリエに所蔵されている。劇中で「オーストリアのモナリザ」と表現されたこの1点を見るためだけに、このギャラリーを訪れる人も少なくないそう。今度ノイエ・ガレリエに行く機会があったら、この絵画がだどった数奇な道のりと、歴史に翻弄された多くの人たちの思いを重ねながら、この絵と向き合ってみたい。

「あぁ、この絵なら見たことがある!」と、
ひと目見れば誰でもわかる有名なこのグスタフ・クリムトの絵画に、
そんな背景があるなんて知らなかった。


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