Saturday, March 8, 2014

Philomena(フィロミーナ)

素晴らしい映画でした! ふとした一夜の出来事で妊娠しシングルマザーになってしまうティーンエイジャーのフィロミーナ。1950年代のアイルランドの敬虔なカトリックの町では、結婚もせず若くして身ごもった女性は「ふしだらなもの」として修道院にぶちこまれ、生まれた子どもは3歳の時点で勝手に養子として売り飛ばされてしまう。そして50年後、英国で結婚をして子どももいるという普通の暮らしをするフィロミーナは、娘の知り合いで元BBCのジャーナリストであるマーティンに協力を求め、50年間生き別れになった息子捜しを始めるという、そんなストーリー。でもこの映画は、生き別れた息子を捜し出して再会を果たすという種類の感動物語ではなくて、展開のひとつひとつが「えっ、うそ、マジで!?」ということの連続。そしてまさかの結末にたどり着くまで、わかっていく驚きの事実を冷静に受け止めていく母親の感情と、その驚きの事実に対するジャーナリストの正義が、計算されつくしたバランスでぶつかり合う。シリアスな題材を軽いタッチで笑いを交えながらも、主役ふたりの心の動きがしっかりと描かれている傑作である。フィロミーナもマーティンも実在の人物。そして宗教、人身売買、同性愛など、現代社会が抱える人権問題にも切り込んでいくこのストーリー自体が、実話であるというのも驚きだ。マーティンの正義や怒りが映画を観る私たち世代を代弁するようでもあり、すべてを受け入れなお母親であるフィロミーナの執念には、理屈を抜きにしてグッと来ずにはいられない。そんな想いが同時にやってくる見事な作品は、文句なしに5つ星! もちろん、カトリック教会からは厳しく抗議されているらしいけれど。



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